お酒の事業を行うにあたり、他の小売業者等へ卸売をしたいという場合、酒類卸売業免許の取得が必要となります。
酒類卸売業免許は実は種類が多く、それぞれの免許ごとに販売できるお酒の種類や、その取得するための難易度も異なります。
この記事では、各免許の特徴などについて解説していきます。
・前提知識
酒類卸売業免許は、酒類小売業者、または他の酒類卸売業者にお酒を卸売することができる免許です。
一般消費者や、飲食店に対してお酒を売るためには酒類卸売業免許ではなく、酒類小売業免許を取得する必要があります。
その為、居酒屋等にビールの樽や日本酒がたくさん入ったカゴをトラックから積み下ろししている場面をよく見かけますが、あの作業はいわゆる卸売ではなく、小売です。業者の方も酒類卸売業免許ではなく、酒類小売業免許に基づいてお酒を居酒屋などに販売しています。
免許を取得する際、お酒を販売する相手方が誰になるのかによってどの免許が必要になるか異なるため、注意が必要となります。
①全酒類卸売業免許
全酒類卸売業免許は、すべての酒類の卸売ができる、最も万能の卸売業免許となります。また、日本酒や焼酎は原則この免許を取得しなければ卸売ができません。
他の卸売業免許はいずれも「〇〇の卸売に限る」という条件が付されていますが、全酒類卸売業免許はどのお酒でも卸売ができます。
取得のための要件は非常に高くなります。
年に1度、毎年9月にだけ行われる公開抽選の順位に基づいて審査が行われ、倍率はおよそ40倍ほどになることもあります。
更に、年間の見込み卸売数量が100kL(1kL=1,000L)を超えなければならないという、非常に高いハードルがあります。
その為、卸売する酒類の品目を限定する等して、他の卸売免許の取得での対応を検討することも選択肢となります。
②ビール卸売業免許
ビールを卸売するための免許となります。
全酒類卸売業免許と同じく、毎年9月に行われる公開抽選の順位に基づいて審査が行われます。ただし、全酒類卸売業免許と比較して抽選枠が多いため、取得の難易度は全酒類より低くなります。
年間の見込み卸売数量が50kL(1kL=1,000L)を超えなければならず、高い販売力が求められます。
③洋酒卸売業免許
卸売業免許の中でも主流となる免許です。
果実酒、ウイスキー、ブランデー、発泡酒、その他醸造酒、スピリッツ、リキュール等を卸売するための免許となります。
※発泡酒はビール卸売業免許ではなく、洋酒卸売業免許です。
お酒の品目については、上記のすべてについて認められる場合とまたは一部品目に限定される場合があります。
取引先が扱っている酒類の品目を確認するなどし、できる限り多くの品目について認められるようにしましょう。
④輸出卸売業免許・輸入卸売業免許
こちらも卸売業免許の中では主流となる免許です。
海外の小売業者にお酒を輸出して販売できる免許が輸出卸売業免許、自己が直接輸入するお酒を国内の小売業者に卸売できる免許が輸入卸売業免許となります。
※税務署の手引などでは「輸出入酒類卸売業免許」とまとめて記載されていますが、輸出、輸入でそれぞれ異なる種類の免許となります。
自己が輸入・輸出する酒類であれば、すべての品目の酒類を卸売することができます。
⑤自己商標卸売業免許
自己が開発した(自己が開発を依頼した)商標、銘柄のお酒に限り卸売が可能となる免許となります。
自己が開発した酒類であれば、すべての品目の酒類を卸売することができます。近年よく見られるクラフトビールやクラフトウイスキー等を自己の商標で卸売を始める場合には、この免許が必要となります。お酒について、自己が開発したことを証明する書類(商品企画書など)を用意することについて、ハードルが高くなります。
⑥店頭販売酒類卸売業免許
自己の会員である酒類販売業者に対し、店頭において酒類を直接引き渡し、当該酒類を会員が持ち帰る方法により、卸売することができる酒類卸売業免許です。
全ての品目のお酒を、自己の会員に限り卸売することができます。
卸売業免許となるため、当然、自己の会員となる方は他の酒類販売業者となります。
⑦協同組合員間酒類卸売業免許
自己が加入している事業協同組合の組合員である酒類小売業者に酒類を卸売することができる免許です。
⑧特殊酒類卸売業免許
酒類事業者の特別の必要に応じるためみ、酒類を卸売することが認められる酒類卸売業免許をいいます。
●まとめ
酒類卸売業免許は種類が多く、自身が卸売をしたい酒類の品目によってどの免許を取得すべきなのか、事前によく確認を行う必要があります。
当事務所では、お酒に関するご相談を無料かつ全国対応しておりますので、ご不明な点がありましたら当事務所へお気軽にお問い合わせください。