遺言書には、相続人や受遺者(相続権がないのに、遺言書によって財産を譲られる人)のことについて記載することはもちろん、残したい財産についても記載します。

では、遺言を残した後に遺言に記載した財産を自分で処分(これを「生前処分」といいます)した場合どのような処理がされるのかというと、遺言は撤回したものとみなされてしまいます。

民法1023条

1 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

そのため、遺言者死亡時、その財産が存在しないため遺言が遺言者の意図通り執行されず、相続人同士でトラブルになることがあります。

このようなトラブルを避けるためには、どの程度まで具体的に財産を遺言書に列挙すべきかが問題となります。

まず、銀行口座については、どのように記載するのが望ましいのでしょうか。

どのような遺言書を残すかにもよりますが、解約する予定のない口座については、

①銀行名

②支店名

③種別(普通預金か当座預金か)

④口座番号

以上の情報についてを遺言書に記載し、

ことが望ましいといえます。

こうすることによって、金融機関に対して遺言の執行が容易になります。

また、同様に処分する予定のない土地・建物等の不動産については、

①地番

②家屋番号等

を記載するようにしましょう。

なお、遺言書を作成した後に財産を処分したことによって、遺言書の内容に影響が出てしまう場合でも、「遺言を撤回する」といった内容の遺言書を新たに作成すれば問題ありません

民法1022条

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

公正証書遺言の場合は公証役場で撤回の申述を、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、手元の遺言書を物理的に破棄すれば遺言を撤回したことになります。

そして、新たに再度遺言書を作成する流れとなります。

当事務所は、遺言書の撤回等、遺言書作成後の手続きについてもご相談を承っておりますので、遺言書についてご不安に思われることがございましたら、お気軽にご連絡ください。